市民の港に対する[親近感醸成]に配慮を
SOLAS立入り禁止の運用につき
国交通省港湾局が事務連絡x



     (名古屋港飛島埠頭ゲート)
国土交通省港湾局では、SOLAS条約(海上人命安全条約)及び国際船舶・港湾保安法に基づく保安対策に基づく港湾の立入り禁止に関連して、12月22日付けで各地方整備局にあて、以下のような主旨の事務連絡を行いました。全釣り協では今回の事務連絡について、別記のような考えかたに基づく柔軟な対応のあらわれであり、相互理解が進捗することにより、一層管理の実効が期待できるものと高く評価し、今後釣り人の協力体制の強化をはかるとの考えです。
○ 保安対策は、国際航海船舶が利用するふ頭について最小限度の保安措置を講じたものであり、制限区域については、釣り人等一般市民についても入場を規制することはやむを得ないものではある。.
○ 一方で、従来から進められている港湾における「利用しやすく、活力があり、働きやすい、親しまれるウォーターフロントの形成」の観点から、今後とも、一般市民の港に対する親近感を醸成することに逆行しないような配慮も必要である。

港湾の保安の確保と市民に親しまれるウォーターフロントの形成の両立に向けての具体的な指摘は次のような概要です。
1.一般市民の理解と協力
  関係者や一般市民(釣り人等を含む)に向け、テロ対策の重要性及び制限区域内への立入制限の必要性などについて、十分に説明する等、引き続き、市民に対する理解と協力を得るよう努める。
2.制限区域設定の際の配慮
  国際ふ頭施設の新設・改良などに際し、過剰な立入制限とならないよう、必要最小限の制限区域となるように設定を考慮する。
3.保安措置の運用上の配慮
  港湾施設の保安水準を低下させず、かつ適切な措置(開放終了後制限区域内の点検を行うなど)をとった上で、「市民開放デー」のような形で国際ふ頭施設を開放したケースがもある。
4.港湾計画の策定に於ける配慮等
  港湾計画の策定に際しては、一般市民の意見を十分に聴取するとともに、中長期的観点から、国際物流のための人・ものの動線と一般市民の港湾利用の動線の分離や国際物流機能の集約化などを引続き推進する。
港湾の保安と安全に配慮しつつ、水際線の開放や釣り公園の設置等を積極的に推進する。
国際船舶・港湾保安法 への全釣り協の考え方
社)全日本釣り団体協議会ではSOLAS条約に伴う港湾の立ち入り制限について、平成16109日の理事会で次のように決定しています。
@     立ち入り制限問題は、港湾にける親水地域設置等ここ数年の国の取り組みとは矛盾するが、外国との条約締結により国が定めた法律だから、釣り人もこれに協力する。
A     すべての海岸などで、不審な人物、不審な物体を見かけた場合、速やかに通報するなど協力姿勢を周知させる。
B     各地域において港湾管理側と相互理解と信頼関係を深め、この問題について、制限区域の見直し、使用頻度の低い岸壁などでは、使用時以外の限定的な立ち入りを認める。など柔軟な対応を求めていく。
 この問題の解説
港湾の保安のための立入り禁止について、全釣り協では、国際条約に基づく制限であるから、釣り人も市民の一員として協力すべきであるとしています。
しかし、過剰な広範囲での立ち入り制限や、硬直した運用、管理の例を調べ、大まかに状態がつかめたところで、あらためて国土交通省あて、柔軟な運用を希望する主旨の要望書提出を視野に入れ、調査をすすめてきました。
これまでに各地から集まっている資料を分析すると、東京湾、大阪湾など
重要港の場合、コンテナー埠頭など港内の奥まった場所にあり、釣り人にとってさほど大きな制限ではないという所感が多かったのですが、他方、北九州、遠州灘各地、日本海側各地、北海道の苫小牧をはじめとする外洋に面した重要港では、水質がよく、潮通しも良いところから、これまで、好釣り場として通いなれた埠頭が、突然立ち入り禁止になるなど、戸惑いを禁じ得ない場所に柵が設けられている例も多いようです。
調査の概要では、当初、各港湾とも厳戒態勢を敷いて完全に立ち入り禁止を実施しようとしていましたが、17年夏頃からややフレキシブルな対応が考慮されるようになっており、徐々に相互の信頼関係が醸成されつつあるとの感があります。
一方で、保安法とは関係のない場所で、便乗と看られる立入り禁止の強化が数多く行われています。安全保持を理由として強固な柵が作られた結果、これを無理して越そうとして転落死亡というケースもあらわれています。
立入り禁止の理由明示と、相互理解、それに続く今後の調整も重要課題であるとしています。
 保安設備の運用、管理は地方自治体に委ねられているので、まず、各地の実情を調べ、運用の柔軟なかたちを求め、その結果をとりまとめて、今後、国土交通省に柔軟な対応を求めつつ協力する方向です。
各地の都府県釣り団体協議会や正会員団体、釣りインストラクター連絡機構のほかに、一般釣り人のみなさんにも、広く意見を求めます。
また、この問題に関し、釣りに関連する有力団体として ()日本釣振興会の各支部との連携が必要であると呼びかけています。

釣り人が留意せねばならない課題  

かねてからいわれているように、岸壁などでのゴミの放置、港湾施設などにおける危険区域の禁札の無視など、釣り人側のマナーの悪さも広範囲な立ち入り禁止の要因の一部にあげられます。

これについては、釣り人側でもあらゆる機会を通じ、ゴミの放置に反省を求める呼びかけを行ったり、ゴミの回収活動を実施するなど次第に自浄の気運が高まってきています。

また、釣り場での事故等については、各自の責任であるとの考え方を周知徹底させ、海上保安庁とも連携して、釣り場ではライフジャケットを常時着用することを釣り人の常識として、普及させるよう努力を重ねてきています。

港湾の管理は、国民から地方自治体を通じて港湾管理者に委任しているというのが本来の姿であるわけですが、旧海軍、米軍による戦中、戦後の管理体勢以後50年あまり、港湾施設の管理権は港湾関係者にあるとの考え方が往々見受けられました。

企業の岸壁などによく見られる立ち入り禁止などについても、港湾施設の場合は公有水面に接しているにもかかわらず、これまでは管理し、取り締まる側による一方的なものであり、これに市民が関与することは許されず、せいぜい“黙認”というのが、過去の常識とされてきています。前記の事故例をみた場合、黙認≠ウれていた場所に突然、事故防止のための柵が設置され、かえって事故を発生させた結果となっています。柵の設置や、釣り禁止について相互理解の措置が不十分であったケースであり、これを釣り人のマナーの悪さという視点でのみ排斥非難することには強い違和感を覚えます。

これらのことに、現時点で、あえて異をさしはさむわけではありませんが、港湾と市民との関係について、相互理解を推進する必要性を強く感じています。

管理者の中には、事故が起きたとき、管理責任を問われるのではないかという思いがあり、釣り人の側でも、“黙認”を承知の上でおそるおそる釣りを楽しむという状態でした。

しかし、事実上、都市周辺の市民が“釣り”という、この島国ではきわめて普遍的な楽しみを得るためには、港湾の岸壁を“黙認”されつつ有効に利用するほかありませんでした。

このような問題について国の側でも、親水設備の充実や、緑地造成など、港湾における市民と海の接触に強い関心をもつような施策が実行されてきています。

釣りシーズンなど、全国の埋立地や岸壁でファミリーフィッシングを楽しむ釣り人の数は一日で1000万人を越すとされています。港で釣りが出来ないとなれば、釣り存亡の危機であるわけです。



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