7月1日港湾の立ち入り制限開始
2002年12月に改正された「海上人命安全条約(SOLAS条約)」に対応するため定められた「国際船舶・港湾保全法」に基づいて、国土交通省が指定して、保安対策の義務化を予定している重要港湾112港のうち、特定重要港湾(24港)と、一部の重要港湾で、テロ対策のため防護柵や照明設備などを設け、一般市民の立ち入りを制限するなどの措置が7月1日からはじまりました。
全釣り協では、5月中旬からこの問題を重要視し、国土交通省側と話し合いを進めてきましたが、この立ち入り制限設備や運用については、地方自治体の港湾局などが実施主体であり、条約改正からの日時が短かったため、各地港湾の対応の具体的なものがつかめず、このため各都道府県釣り協などで、独自の調査を行ってきました。
この問題について、各地の港湾当局の対応を整理すると次のようなものです
@ 情報をあらかじめ市民に公開し、協力を求める姿勢
A 7月1日の実施日までは秘密事項なので事前の公開はできないという姿勢
B すでに立ち入り禁止措置を長年にわたり続けており今回はそれを強化するだけ
C 港湾のなかでも、立ち入り禁止を予定している地域は、従来からほとんど釣り人が姿を見せることのない場所なので、あまり影響はないと説明するにとどまる
D 港湾は、釣りをするためにある設備ではないから、と突っぱねるもの
E 施設の予算は国が多くを負担するが、運用、管理は自治体が行わねばならず、現在の財政状況では、完全な対応を求められても無理である
など、さまざまでした。
一方、釣り人の側でも、
@ かねてから港湾で釣りを楽しむことは、相互に黙認状態であった。
A 柵を構築していることは知っているが、実際に厳密な制限があるのかどうかわからない
B 釣りの自由に対する、重要な制限だ。
C 港湾で、事故等が発生した場合、発見者が釣り人であることが多い。
D 過剰なほどの範囲で、防護柵が構築されており、その範囲の設定に疑問がある。
E 1ヶ月に数日しかない外国船の寄港日のために、24時間体制で監視を続ける必要がないと思う。
F 実際に制限がはじまってからでないと、よくわからない。これまで立ち入り禁止といわれていても、なしくずしであったところが多く、あらためて問題を大きくすることはない。
G 地元の釣り人を締め出すよりも、税関、検疫のほか、外来生物や病原菌などの侵入に力をそそぐべきではないか。
などとしたさまざまな意見が出されていました。
全釣り協では、国際条約に基づく制限であるから、釣り人も理解し、協力するほかないが、過剰な広範囲での立ち入り制限や、硬直した運用、管理の例を調べ、大まかに状態がつかめたところで、あらためて国土交通省あて、柔軟な運用を希望する主旨の要望書を提出することを視野に入れ、調査をすすめています。
これまでに各地から集まっている資料を分析すると、
東京湾、大阪湾など最重要港の場合、コンテナー埠頭など港内の奥まった場所にあり、釣り人にとってさほど大きな制限ではないという所感が多かったのですが、北九州、遠州灘各地、日本海側各地、北海道の苫小牧をはじめとする外洋に面した重要港では、水質がよく、潮通しも良いところから、これまで、好釣り場として通いなれた埠頭が、突然立ち入り禁止になるなど、戸惑いを禁じ得ない場所に柵が設けられている例も多いようです。
保安設備の運用、管理は地方自治体に委ねられているので、まず、各地で実情を調べ、運用の柔軟なかたちを求め、その結果をとりまとめて、今後、国土交通省に柔軟な対応をもとめていく方向です。
各地の都府県釣り団体協議会や正会員団体、釣りインストラクター連絡機構のほかに、一般釣り人のみなさんにも、広く意見を求めます。
調査の中間報告
【千葉県・東京都・神奈川県】
木更津、千葉、東京、川崎、横浜、横須賀の各港では、立ち入り制限区域に防護柵を設けているが、これまで釣りに使われていた場所とはほとんど関係がなく、影響はあまり見られない。
【静岡県】
御前崎、清水では、かなり広範囲に柵が設けられ、関係者以外立ち入り禁止の制札がつけられている。釣り人にとっては大きな打撃だ。
【愛知県】
名古屋港では、名古屋港管理組合が外航船の発着する公共埠頭の16エリア延べ18kmに高さ3bの防護柵を設置した。防護柵の内側に入るためには、所々に設けられたゲートから通行証を示した港湾関係者にかぎられる。コンテナー埠頭には、監視カメラや照明設備が設置され、不審者の出入りを厳重に見張る方針。
これらの埠頭は、従来から釣り人に利用されており、制限区域の海岸線も想像外に大幅なものなので、影響は大きい
【福井県】
敦賀港では、港内の一部が立ち入り制限区域となっている。これは従来から立ち入り禁止区域であり、付近に釣り場も多いことから、ほとんど影響はない。
【京都府】
舞鶴港では、東港の前島埠頭、西港の和田埠頭、喜多埠頭、第2、第3、第4埠頭が立ち入りを制限される。喜多の埋立地と、和田埠頭については、好釣り場とされてきたが、その他の埠頭に関しては訪れる釣り人も少なく、あまり影響はない。
【大阪府】
堺泉北港では、汐見埠頭の2号、3号、4号、5号と、ほぼ全域と、助松埠頭の北側一部が立ち入り禁止になっており、一般市民がアジ、サバなど回遊魚の釣り場として親しんできた場所だけに、打撃は大きい。また、大浜埠頭5号の先端部のみが立ち入り禁止になっている。荷役や大型車の往来が激しい地域だが、夏から秋にかけて、タチウオ釣りを楽しむ人が散見された程度で、さほど大きな打撃ではない。
阪南港では、岸和田1号、2号埠頭が立ち入り禁止だが、あまり影響はない。
【兵庫県】
神戸港 未確認。秘密とのこと。
姫路港 飾磨区中島の一部と姫路ポートセンターから先の埋立地ほぼ全域
御津港 揖保川河口左岸の貯木場付近2箇所
【愛媛県】
三島川之江、新居浜、今治、東予、松山、宇和島の6港で計10箇所の制限区域を設けた。釣りの好場所として親しまれた場所が多いだけに、釣り人としてはかなり打撃になる。
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