外来生物法以後の全釣り協当面のスタンス
平成17年6月1日をもって外来生物法が施行されました。それによりオオクチバス、コクチバス、ブルーギル、チャネルキャットフィッシュが防除特定種に指定されました。
緊急的に防除を行うモデル事業に関しては

 @  伊豆沼・内沼(宮城県)
A羽田沼(栃木県)
B片野鴫池(石川県)
C犬山市内のためいけ(愛知県)
D琵琶湖(滋賀県)
E藺牟田池(鹿児島)
にかぎられます。
しかし、法は全国のすべての内水面の水域に及ぶものであること及び法の主旨について、十分知識を得た上で法を侵すことのなく釣りを楽しむよう希望しています。
また、防除に関しては、以下のような「自主的秩序形成」を基調として、全国各地の地元関係者(漁業組合、水面管理者、行政)との話し合いを、研究者などの意見を聞きながら進捗させることにしています。

《参考》オオクチバス等防除推進検討会提出資料から

平成17年5月13日

(社)全日本釣り団体協議会

1、           外来生物法ならびに基本方針に関して

わたしたち(社)全日本釣り団体協議会でも外来生物法及び基本方針の課題については、多数の釣り人が、かなり以前から危惧を抱いてきた問題であり、実際に水辺で水生生物に接する機会の多い国民の一人として、当然、参画、協力すべき事柄であると考えています。また、法制化にともなう国是が明確となった以上、これを機として、我が国の水域環境及び水生生物保護について、視野の広い「あるべき姿」と「そのための現実的な対策」を提案するとともに、これを一般市民に伝達し、あげて自然環境の維持回復に臨む役割の一端を担うべく、活動を開始する所存です。可能な限りの協力体勢を整えるとともに、かねてから言及しておりましたように、施行にあたっての混乱等を回避するために、実行可能な防除計画の立案を希望します。

2、           特定種指定の経過について

特定種の指定にあたっては、4回にわたり開催されたオオクチバス小グループ会合の当初の対応と、終了以後の経過について、大きな隔たりがあり、このことにより、釣り人の間に、法の内容の賛否と関係なく、法の成立プロセスに対する不透明感が惹起されております。常に国民の理解と協力を必要とする環境関連問題であるだけに、今後が気がかりです。当然、所定の手続きは踏襲しておられることと存じますが、防除推進検討会開催にいたるまでのプロセスについて、一般市民に理解されやすい経過説明が必要ではないか、そのことにより、外来生物に対する挙国体制への理解度がより推進されるのではないかと判断しております。

3、         防除に関する当会の基本的な考え方

@      外来生物法が施行されるにあたり、法の主旨に基づき、より有効な防除の方法を提案し協力体制を具体的に整備し、実行可能な方法で防除進捗に協力する方針です。

A      しかし、我が国の内水面の大半にバス等が生息している現状と、直ちに全面駆除する方法が、いまだ解明途上にあることを考えるとき、防除にあたっては、絶滅を危惧される貴重魚種生息地での「防除指定地域」と、「その他の場所」をわけて考え、状況に応じて実行可能な方法で、全体として漸減をはかることが、防除の実効をあげる上で重要な課題であると考えます。

B     緊急を要する完全防除実行地域については、水産資源保護法による保護区と同様あるいはそれ以上の強い姿勢が必要とされます。貴重魚種の密猟、 外来魚の密放流等を防止するため、該当水域に柵等を設け、全面的な立ち入り禁止とし、防除のため立ち入る場合にも、地域行政、研究者等の立会いを必要とするなどの厳しい措置が望ましいと考えます。

C     その他の場所では、学識経験者ばかりではなく、実際に防除の役割を担うことになる地域及び漁業者、釣り人が参画した、あらたな管理秩序を形成する必要があります。こうした管理秩序には、 外来魚の防除ばかりでなく、すべての水生生物や、水域の環境管理を含め、これまで、ややもすればなおざりにされることの多かった内水面の環境悪化防止、環境回復に視点をあてた、広い視野に立った水域環境に対する知識の普及と実行可能な計画が求められます。

D      一方で、オオクチバス小グループ会合が開催された所以である、バス等釣り愛好者に、いかにして法の主旨を理解させ、周知徹底せしめるかが、大きな課題となってきます。これらの人々が過去に認識してきた価値観の改訂を含め、バス等愛好者の心情的な部分にも、理解と配慮を欠かことができません。

 同様に、バス等によって生計を立ててきた人々へも配慮した柔軟な対応も必要です。このことが防除実行上でのキーポイントになると思われます。

E      すでに全国各地から、「バス等を有効利用して秩序形成に着手したい」とした請願等が提出されていると聞いています。また、他の多くの地域においても、環境協力金等の名目による有効利用が実施されてきています。今後防除を実行するにあたり、周辺の水域環境保全を含めた管理に当たるのは、現地漁業組合しかありません。「バスを漸減させ、流出しないように管理し、管理協力の費用を徴収し、その収入で積極的な環境管理にあてる」という「防除のプロセスとしての自主的秩序形成」に対する取り組みが、各地ではじまろうとしています。同時に自主的防除地域の設定も計画されています。

こうした市民参加による自主的な秩序形成」が環境問題対策の本来のあるべき姿であり、外来生物法が国民に求めている精神ではないかと推察します。

これらにご配慮いただくことが、結果として漸減防除の実行に大きく寄与するものと考えます。

F      これら新しい秩序への参画希望者に関し、地方行政においても、その主旨をご理解いただくことで秩序の作成がスムーズに進捗すると考えます。このためには防除推進とは別に、防除の秩序作りのための具体的ガイドライン作成等が必要です。これには、学識経験者ばかりでなく、実際に防除作業にあたる地域、釣り人、漁業者の参画が不可欠だと思われます。

G      違法放流対策については、オオクチバス小グループ会合においても、しばしば取り上げられておりますが、釣り関係者による釣り場拡張のための組織的な違法放流はもはや存在しないと考えており、今回の外来生物法施行に伴う移動の禁止によって強化されると判断しておりますが、これを機として、さらに法によって、私的な移動が禁止されている旨を周知させるべきであると思われます。また、違法放流の予防措置として、地域を主体とした監視、通報、取り締まり等のシステム化が必要であり、その一端は釣り人が担うべきでしょう。

H      「運搬、移動」の定義についてさまざまな風説が流布され、釣り人の間に不安が高まっております。「キャッチ&リリース」に関しましては、これを禁じることは法制上なじまないというのが基本方針作成時からの前提となっており、オオクチバス小グループ会合でも再三にわたり確認済みです。国会における環境大臣のご答弁でも明確な事項なので、その旨伝達して、施行にあたっての混乱防止に努めていることをご報告しておきます。

また、この件に関連して、平成11年8月10日付けで、水産庁資源管理部長名で「移植」の定義に関する回答が出されており、漁業、遊漁者の間に深く定着しています。「運搬、移動」に関してもこれに準じるのが、混乱を回避し防除の実を上げる方法であると判断しています。

  

(参考) 都道府県漁業調整規則例に定める「移植」の定義について(回答)

   都道府県内水面漁業調整規則第33条における「移植」とは、水産動物の生体(卵を含む。)を人為的に移動させることをいう。ただし、湖沼又は河川の全域にわたって当該水産動物の生息が確認されている同一水域の範囲内で移動させる場合を除く

     (具体例)
    例えば、水系の異なる水域へ移動させることや、当該水産動物が通常移動することが明らかに不可能なダム等を越えて移動させることは「移植」に該当する。また、販売店等から入手したものや、観賞用に飼育していたものを河川等に放流することも同様に「移植」となる。   なお、釣り上げた当該水産動物をその場で放流することは「移植」に該当しない。

4、           防除に関し釣り人が協力できる計画について

@      (社)全日本釣り団体協議会傘下の釣り団体(都道府県釣り団体協議会、広域釣り団体)及び、公認釣りインストラクター連絡機構等に外来生物法の主旨を伝達し、各地方において、協力体制を整えることとします。

A      防除の効果的な成果を期するため、違法放流、移植防止のためのモラル確立を、関係釣り団体の連絡網、機関紙、釣り関連報道機関等を通じて、さらに周知徹底させるよう働きかけることとします。

B      広く一般釣り人に呼びかけ、外来生物法の基礎となる、水生生物及びその生息環境に対する、新たな秩序について、理解と協力を求める活動を開始することとします。また、全国各地で開催する釣り教室等においても、青少年に向け、法の内容の知識普及を周知徹底させるよう活動を開始することとします。

C      公認釣りインストラクター等を中心に、釣り場環境の保全に関する講習会等を全国規模で実施し、水辺環境調査、一般釣り人等にむけ指導、知識普及等をはかるための「環境チェッカー制度(仮題)」を発足させる計画です。

D      地域や関係機関等と連携を保ち、在来貴重魚種保存のための防除地域等を具体的に検討し、在来水生生物の生息環境の維持再生活動への積極的な参加協力体制などを整えることを計画します。

E      あらたにバス等が侵入したことがわかった場所では、直ちに防除作業を行う必要があります。速やかに協力することが可能な体勢を整えます。

F      全国的に各地域の人々や研究者と意見交換するための「自主的秩序形成のためのマニュアル」を作り、可能な限り早期に意見交換の機会を設け、外来魚防除はもとより、指摘を受けることの多い釣り糸、ワーム等の回収及び放置ごみの撤収作業等の企画をさらに拡充します。また、駐車場所、水質問題ほか諸問題の解決策について十分な話し合いを行いたいと考えます。

G      地域との話し合いにより、緊急防除地域とは別に“自主的防除地域”を設定することを計画します。自主的防除地域においては、釣り上げたオオクチバス等を集め、許可された、釣り堀等管理釣り場に許可を得て移動させるなどの処置を呼びかけます。釣りを通じて生息場所の整理整頓を積極的、自主的に行い、順次、自然環境に対するモラルの確立をはかり、かつ、多くの釣り人の共感を得て、オオクチバス等の漸減と、秩序形成に大きな役割を果たすと確信します。

H      オオクチバス等の漸減を期し、管理を行うことを希望する水域では、地域の実情に応じた管理ルールの策定に参画し、来訪する釣り人にこれを徹底遵守するよう呼びかけることとします。この場合、より有効な防除効果を上げるため、外来魚及び在来魚の生息状況などに関する、綿密な調査が必要となります。専門研究者、漁業者に加え、釣り人にも積極的な協力を呼びかけたいと考えています。

                           以上



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